経営判断の礎となる情報を収集・分析し、長崎から世界を動かす
世界6位の船腹量を誇るコンテナ海運企業、Ocean Network Express(以下、ONE)の中核業務を長崎から支援するONE DEJIMA株式会社。同社の「Business Intelligenceチーム(以下、BIチーム)」はONEのストラテジックイールドマネジメント部門と連携し、同社の経営判断を情報調査と分析により支えています。BIチームで得られる経験や展望について、ONEのイールドマネジメントチームの責任者とONE DEJIMAの代表にお話を伺いました。
多角的な市場動向の調査・分析によってONEの事業成長を支える
Ocean Network Express Holdings, Ltd., M&C Division, Strategic Yield Management Dept, Yield Management Team/加藤 鷹史(右)
ONE DEJIMA 代表取締役 社長/遠山 直人(左)
ONEおよびONE DEJIMAの事業概要をお聞かせください。
遠山:ONEは、日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ定期船事業部門を統合して設立した海運会社です。シンガポールに本社を置き、日本を経由しない貨物の輸送も含め、グローバルな海運事業を展開しています。
そしてONE DEJIMAは、ONEの人事や経理、情報分析といったさまざまな中核業務を支援する「地域発のグローバルKPO会社(※)」です。長崎県に拠点を置きながら、シンガポール本社の一部として仕事をするのが特徴で、本社よりも小規模な企業だからこそ、その柔軟性を生かしながら新規事業開発などにも取り組んでいます。
※KPO:Knowledge Process Outsourcingの略称。「知的生産活動のアウトソーシング」を意味し、市場調査やデータ分析など、高度な知識と専門性が求められます。

ONEのストラテジックイールドマネジメント部門と、ONE DEJIMAのBIチームが担う役割についてお聞かせください。
加藤:ストラテジックイールドマネジメント部門はマーケティング&コマーシャルディビジョンの一部門で、運送コストの管理、収益率向上を目指した戦略策定、積載率・運賃の将来予測、競合分析、環境規制対応など多岐にわたる業務を担っています。
ONEはコンテナ船業界において世界で6番目のマーケットシェアを誇り、日本発着のコンテナ貨物の過半数を扱っています。そんな企業の一部門として収益率向上を目指す私たちは、さまざまな情報から市場動向の変化をいち早く捉え、ONE全体の意思決定や戦略立案を行う際にスピード感ある判断を支援することが求められています。
そんなストラテジックイールドマネジメント部門と密接に関わっているのが、2024年9月、ONE DEJIMA内に新設されたBIチームです。主な業務は、業績を伸ばしたい国や地域の状況、戦略貨物の市場動向調査、競合他社の財務分析など、ONEのマーケティングに必要な情報の調査・分析です。ONEには、これまで自社内に調査・分析を専門とする部門がなかったため、BIチームが立ち上げられました。
なぜONE DEJIMAにBIチームを立ち上げ、調査業務を内製化したのでしょうか。
遠山:依頼できる調査会社やコンサルティングファームは世界各地にありますが、ONEのグループ内で海運業やコンテナ海運企業の事情を深く知るONE DEJIMAのBIチームの方が、現場感のある結果を出すことができると考えたからです。内容によっては外部機関から情報を購入することもありますが、できる限り自社で調査し、レポートをまとめた方が、直接ONEのアクションに結びつく結果を出せるはずです。仮に、外部に依頼するとしても、自分たちに調査・分析の素養がなければ適切な指示を出すことはできないでしょう。また、内製化することでナレッジが内部に集積していくことも、メリットと考えています。こうした点からも、基本的な調査・分析機能は自社で持つべきだと考えています。
現場感のあるレポートで最適なネクストアクションを引き出す
ONE DEJIMAのBIチームは、具体的にどのような支援を行っていますか。
加藤:現在、ONEは貨物量を1.5倍にすることを目標に、新規顧客獲得や戦略貨物の増量に注力しています。そうした事業戦略のもと、ヨーロッパのアドリア海での事業に今後注力したいと考え、先日BIチームがその調査を担当しました。アドリア海周辺の産業動向や競合他社のサービスや貨物の動きなどを網羅的に調べ、ONEの戦略構築に生かせるレポートとして提出したところ、このレポートをもとにタスクフォースが立ち上がりました。こうした成功事例を今後も増やしていきたいです。
なお、BIチームが調査するテーマは、マクロなものからミクロなものまでさまざまです。貨物に特化したテーマの一例としては「太陽光発電パネル」が挙げられます。太陽光発電パネルはどこで生産されて、どこに貨物として動いていて、世界のシェアはどうなっているのか。太陽光発電パネルの輸送と関税率にはどのような相関関係が見られるのか。こうした問いについて、ビジネス的な視点だけでなく政治・経済・法的な視点も加えて多面的な調査・分析を行い、レポートを作成しました。これにより自社を取り巻くマーケットの現状を可視化し、ONEが今後どういった顧客にどのようにアプローチしていくのか、前線のセールスやトレードチームに示唆を与え、ONE全体の戦略に貢献しています。

調査・分析業務にとどまらない多機能なチームを育んでいく
BIチームの未来像をお聞かせください。
遠山:BIチームは今後、さまざまな情報の調査・分析に対応するほか、その情報群を蓄積してコントロールするような機能も備えていくことになります。総合的に情報を扱うコアなチームとして成長していくために、「長崎を拠点にグローバルな仕事をしたい」という志を持つ人財を迎え、チームをより強化していきたいと考えています。
またBIチームでは、集めた情報を単に整理するだけではなく、ONEの営業活動やマーケティング、そして利益率向上に直結するレポートを出すことを心がけています。そして、これから「海運業に特化した調査・分析のアセットを豊富に持つ組織」として存在意義を高めていくことで、ONEにとって必要不可欠な組織になろうとしています。
加えて、BIチームはONE DEJIMA自体のブレーン的な役割を果たしていくポテンシャルを秘めています。例えば、ONEの支援を通じて培ったグローバルにおける市場調査スキルを生かして地場企業の海外進出を支援する事業を推進するなど、ONE DEJIMAの新規事業をBIチームがけん引する存在にもなれると思いますので、調査・分析にとどまらない多機能なチームを目指したいですね。
分析思考を強みにグローバルに活躍できる環境で働く
展望実現に向けて、どのような方にBIチームに参画してほしいですか。
遠山:ひとつ挙げるなら、アナリティカル・シンキング(分析思考)ができる方を求めています。BIチームは単に物事を調べて終わりというわけではなく、ONEがこれから成長していくために、現状を構造的に理解し、情報に基づいた戦略を立て、アクションに結び付けていかなければなりません。「ゼロから貿易を立ち上げるとしたら、何からどう着手すれば必要な情報が得られるだろうか」などと考えられる力を持っていると、BIチームで活躍できると思います。
加藤:現在のBIチームメンバーは、必ずしも船舶関係の仕事をしてきたわけではありません。バックグラウンドは公務員や物流業界経験者、別領域での販売営業経験者などさまざまです。もちろん海運業経験者に来ていただければうれしいですが、ビジネスパーソンとしてのポータブルスキルを磨いてきた方であれば、業界・職種未経験の方でも問題ありません。強いて言うなれば、調査業務が中心なのでいろいろなことに「何でだろう」と興味を持てる方が活躍いただけると思います。
またBIチームは、チームワークを生かし、海外の人々とも物怖じせずコミュニケーションが取れる人に向いている環境だと思います。英語力に関しては、社内研修などが豊富にありますし、実務を通じて伸びていきますので、あまり心配しないでいただきたいです。

最後に、BIチームで働く魅力をお聞かせください。
遠山:BIチームにジョインした先のキャリアパスは多岐にわたります。「市場動向がわかる人財」として統括本部から求められることがあるかもしれませんし、シンガポールなどの海外拠点で働く道もあるでしょう。ぜひ、ONE DEJIMAやBIチームの成長を共に支えていきたいと思う方に来ていただけたらうれしいです。
加藤:長崎は古くから海外とつながり、貿易の中心地としての歴史を重ねてきた地域です。造船や海運にもなじみ深く、歴史ある長崎を拠点として、地域に根ざしながらグローバルかつONEの中核を担う業務に携われることは、ONE DEJIMAの特徴だと考えています。
そしてBIチームでは、メンバー自ら他の国に足を運び、現地の議論に参加したり、リアルな現状を聞いたりする機会を積極的に作っています。先に挙げたアドリア海のプロジェクトでは、欧州の関係者と直接やりとりをしながら、レポートをまとめていきました。
そのほか、世界中の海運企業の決算書や、調査内容に応じたさまざまな業界の情報に触れられるという点も魅力のひとつです。こうした環境のなかでグローバルな活躍をしたいという方に、ぜひ来ていただきたいです。

ONE DEJIMAは、長崎の地で操業を開始してから、1年を迎えました。
ONEシンガポール本社(GHQ)や地元長崎の関係者の皆さまのご支援、そして社員一人ひとりの努力により、当初よりも業務範囲は大きく広がり、グローバルなネットワークの一端を担う存在へと成長を続けています。
しかし、まだまだ私たちの存在は、ONEグループの中でも十分に知られていないのが現状です。
そこで今回、創業1周年を記念して、会社紹介ムービーを制作しました。この映像では、ONE DEJIMA設立の背景や、GHQから委託されている業務、そして日々の業務に取り組む各チームの姿を、長崎という美しい街の風景と共にご紹介しています。
私たちは、ONEの中核業務を担うKnowledge Process Outsourcing(KPO)拠点として、世界の仲間たちとともに、より高い価値を創造していきたいと考えています。
このムービーを通じて、ONE DEJIMAがどんな組織で、どんな未来を目指しているのか、少しでも伝われば幸いです。
そして、私たちとともに次のチャレンジに挑む仲間が、この映像をきっかけに現れることを心より願っています。