長崎から推進する「世界に広がるコンテナ定期船業界のIT・デジタル変革」
大手船舶企業3社のコンテナ定期船事業部門を統合し、2017年にシンガポールで設立されたOcean Network Express(以下、ONE)。そのONEの中核業務を長崎から支援するONE DEJIMAでは、ONEのIT・デジタル戦略の実現を推進するべく、「ITコンサルタント」の採用を強化しています。IT・デジタル戦略を実現した先で目指したい未来や日本のIT総合人財が活躍できる理由などについて、ONEのIT部門責任者とONE DEJIMAの代表にお話を伺いました。
世界第6位の海運会社の中核業務を、長崎の地で担う
Ocean Network Express Holdings, Ltd., C&I Division, BPIT & Strategy and Innovation, Executive Vice President/和田 浩介(右)
ONE DEJIMA 代表取締役 社長/遠山 直人(左)
はじめに、ONEの事業内容についてお聞かせください。
和田:ONEは日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ定期船事業部門を統合して設立した国際海運会社です。日本国内の顧客を対象とするだけでなく、海外進出を推進している日系企業の支援など、日本を経由しない貨物の動きもカバーできるよう、海上輸送における東西の要衝であるシンガポールに本社を置いています。
競争が激しいこの業界では、船腹量を確保するため、いかにネットワークを広げ、コンテナ船を配船するかが成長のポイントとなります。3社が統合したことで多くの航路をカバーできるようになり、現在では船腹量が世界で第6位にまで成長しました。
ONE DEJIMAではONEの事業をどのように支えているのでしょうか。
遠山:ONE DEJIMAは長崎県に拠点を置き、人事や経理、市場調査、海運特有の業務など、ONEのさまざまな中核業務を担う「地域発のグローバルKPO会社(※)」です。
今後2030年に向け、ONEはさらに船腹量を増やし、環境への配慮やIT・デジタル戦略に取り組むことを打ち出しています。このIT・デジタル戦略は、ビジネスニーズのデジタル化やデジタルツールの導入、データドリブンな経営判断など多岐にわたり、ONE DEJIMAがその業務を担います。
これらの戦略の立案と実行を担うのは「人」です。ONEが事業拡大するには、中核となる人財が不可欠であり、採用を加速させています。
※KPO:Knowledge Process Outsourcingの略称。「知的生産活動のアウトソーシング」を意味し、市場調査やデータ分析など、高度な知識と専門性が求められます。
コンテナ定期船業界で一歩リードするにはIT・デジタルが不可欠
和田さんはONEのIT・デジタル戦略を推進されているとのことですが、ONEがIT・デジタルに注力する理由をお聞かせください。
和田:大きな船腹量を持つ競合他社と戦うためには、絶えず業務の効率性を向上させる必要があります。ONEでは、IT・デジタルをその手段として位置づけています。例えばコンテナ定期船事業では、自社で引き受けた貨物を搭載するコンテナ一つひとつが、世界中のどこにあるかをリアルタイムで把握しなければなりませんが、そのデータ量は膨大です。こうした作業を効率的に行うには、IT・デジタルが不可欠なのです。
現在のONEのIT・デジタル戦略について教えてください。
和田:先ほど申し上げた自社業務の効率化に加え、顧客にとって使いやすいシステムを作り、顧客体験の向上を図ることも目指しています。コンテナ定期船業界の大きな課題として、デジタル化が大きく遅れていることが挙げられます。
例えば営業は従来、担当者がお客様先を訪れて貨物の発注を請け負ったり、電話で問い合わせがあったりといった地道な方法が採られてきました。しかし、世界の貨物量増加に伴い人手での対応は困難なため、受付から引き渡しまでの自動化が課題です。私たちの事業はBtoBではありますが、BtoCの取引に見られるようなお客様にとって使い勝手のよいシステムを作り、他社との差別化を図りたいと考えています。
実際にどういった取り組みを推進しているのでしょうか。
和田:貨物の受付から引き渡しまでの自動化の例で言うと、これまで電話やFAXで受けていた依頼をWeb経由に置き換えました。
コンテナ定期船事業のお客様は、大・中・小さまざまな規模の方がいらっしゃいます。これまで、多くの船会社では、貨物の多い大手企業のお客様に対しては営業担当者をつけ、ケアしてきた一方、貨物の少ない中小企業のお客様に対してはなかなか手が回らないのが実情でした。今回貨物の受付をWeb経由で自動化したことで、中小企業のお客様が船会社にコンタクトしやすくなり、さらに多くの貨物を引き受けることができるようになりました。このように、日本の社会課題である中小企業の成長にも今後ますます貢献していきます。
IT・デジタルは他社も推進しているため、お客様目線でいかに使い勝手のよいアプリケーションを開発するか、プロセスを簡略化するかで差別化を図る必要があります。その際、お客様に現場でどんなことにお困りかを聞くと、さまざまなアイデアが湧いてくるものですが、多様な意見をまとめ、使い心地のよさを追求し、最適なソリューションを探りながらシステムをデザインしています。
そして、スピーディーなシステム開発を実現するべく、シンガポール・韓国・ベトナムに「ONE Tech Stop」というオフショア開発会社を立ち上げています。グループ内に開発専門組織を設けることで、日々変化する事業に対応したIT・デジタル戦略を推進・実現しているのです。

紙文化が根強いコンテナ定期船業界のIT・デジタル化の先駆けとなる存在に
IT・デジタル戦略が実現した先のONEおよびONE DEJIMAの展望をお聞かせください。
和田:コンテナ定期船業界では紙文化が根強く、IT・デジタル化はまだ十分に進んでいるとは言えません。例えば荷主と運送人が運送契約を締結したことを示す船荷証券は、同じものを3部作成し、3部とも貨物と共に持ち込まなければ荷が下ろせないようになっています。近年ようやく電子化が進んでいますが、貨物を持ち込む先で紙の証券を求められたら、そうせざるを得ないのです。ONEはIT・デジタル戦略を推進し、そうした状況や業界そのものを変えていく先駆けになれたらと考えています。
具体的に、当社としてはまず、基幹システムを刷新し、事業拡大に備えていきます。また、デジタルソリューションを用いた事業アイデアの実現にも取り組んでいきます。これらを推進しながら、事業変革や新たなチャレンジにも対応できるよう、システムを内製できる体制を整える予定です。
遠山:ONE DEJIMAは、ONEのIT部門が推進する戦略を理解したうえで、業務部門の立場としてサポートしつつ、業務変革の推進役になりたいと考えています。
それだけではありません。私たちはONEグループの一員として、常に新たなチャレンジが求められているため、ONEへのIT・デジタル変革で得たIT・デジタルソリューションを、長崎を中心とした地域のお客様にも提供していきたいと考えています。特に中小企業のDX支援に展開し、企業成長に貢献したいですね。
IT・デジタル戦略の推進役となる「ITコンサルタント」をONE DEJIMAで募集しますが、どのような業務を担当するのでしょうか。
和田:ONEのシンガポール本社で働くビジネスサイドのプロセス管理者やベトナム、韓国にいる開発者、あるいはITのパートナー企業との架け橋となり、プロジェクトを推進していただきたいと考えています。また、ONEの基幹システム刷新プロジェクトにも参加いただく予定です。
遠山:ONE DEJIMAではONEのシンガポール本社の業務を請け負う際、業務プロセスの可視化や改善点の検討を行い、専門性やテクノロジーとかけ合わせることで業務の効率化、高度化を行います。そのうえで、新しく生み出した価値をONEに還流させ、ONEのさらなる事業拡大に寄与することを目指しています。
一方で、ONEの仕事だけでなく、ONE DEJIMAの業務自体もデジタル化を推進しています。直近でAIアシスタントの導入を行いましたが、このようなデジタルを活用した新たな業務プロセスをONE DEJIMAで構築できれば、ONEに対してその方法を示すことができます。本体であるONEからスピンアウトした「出島組織」として、小規模ゆえのスピード感・柔軟性を武器に新たな取り組みを推進していきたいと考えています。

ビジネスとテクノロジーに知見を持つ「IT総合人財」が世界で活躍できる理由
どのような人財を求めていますか。
和田:世界のIT人財を見渡すと、多くの場合「PMはPM、開発者は開発者」というように、分業体制が取られています。しかし、日本ではビジネスサイドと関わりつつ、システム開発にも関わる幅広い業務を担う「IT総合人財」が活躍していると思います。コンテナ定期船業界のようなIT・デジタルがまだ浸透しきっていない業界で自社の競争力を強化するうえで、ビジネスとテクノロジーの双方に知見を持つ日本のIT総合人財こそ、ONEのIT・デジタル戦略の強みになると考えています。ぜひ、ITについて広く理解し、ビジネスサイドとの橋渡しができる人財に入社いただきたいです。
遠山:例えば経理部門から相談があった際、経理部門の業務を理解し、どんなシステムが必要か具体像を描き、開発関係者に説明して形に落とし込む推進力が重要になります。そのため、現場に寄り添い、要件定義からシステムの実装、運用までのサイクルを経験したことがある方が理想です。
ONE DEJIMAでITコンサルタントとして働く魅力についてお聞かせください。
遠山:世界中に展開するONEのデジタル戦略の中核を担うため、グローバル規模のダイナミックな業務に携われる点が魅力です。私自身、振り返ってみると、未来を先読みしてユーザーや各業務部門を巻き込んでプロジェクトを推進する力や、多くの関係者をマネジメントする能力が得られたと感じています。
また、キャリアパスは多様です。マネジメント力が身につけば、ONE DEJIMAだけでなくシンガポールにあるONEの本社や、オフショア会社のある海外で働くこともできますし、業務を通じてデジタル化の勘所をつかみ、それを社外に向けたサービスとして展開していくチャンスもあります。
和田:デジタル化の取り組みが進んでいない業界だからこそ、大きな「宝の山」があると考えています。会社としてもさまざまな挑戦を推奨する風土があるので、高度なスキルを身につけ、グローバルを舞台に社会貢献を果たしたいという方はぜひご応募ください。

ONE DEJIMAは、長崎の地で操業を開始してから、1年を迎えました。
ONEシンガポール本社(GHQ)や地元長崎の関係者の皆さまのご支援、そして社員一人ひとりの努力により、当初よりも業務範囲は大きく広がり、グローバルなネットワークの一端を担う存在へと成長を続けています。
しかし、まだまだ私たちの存在は、ONEグループの中でも十分に知られていないのが現状です。
そこで今回、創業1周年を記念して、会社紹介ムービーを制作しました。この映像では、ONE DEJIMA設立の背景や、GHQから委託されている業務、そして日々の業務に取り組む各チームの姿を、長崎という美しい街の風景と共にご紹介しています。
私たちは、ONEの中核業務を担うKnowledge Process Outsourcing(KPO)拠点として、世界の仲間たちとともに、より高い価値を創造していきたいと考えています。
このムービーを通じて、ONE DEJIMAがどんな組織で、どんな未来を目指しているのか、少しでも伝われば幸いです。
そして、私たちとともに次のチャレンジに挑む仲間が、この映像をきっかけに現れることを心より願っています。